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――mogmog engineさんの活動内容を教えてください。

永峰さん: 食べ物などを噛む力や飲み込む力が弱い摂食嚥下(えんげ)障害のある子どもとその家族のコミュニティ「スナック都ろ美(とろみ)」を運営しています。日本には摂食嚥下障害をもつ子どもたちが10万人以上いると言われています。医療機関において身体の麻痺等のリハビリテーションを受ける機会はあるのですが、毎日の食事や命に関わることは親任せになっているのが現状です。個別性が高く日々の体調が変動したりすることもあり、小児の食べることに関する専門的な指導を受ける機会が少なく、お母さんたちが非常に悩み日々苦労しながら子育てをされています。

 高齢者の摂食嚥下障害は100万人以上いると言われおり、喉の筋力の衰えなどにより摂食嚥下障害になる方がいらっしゃいます。両者の違いは一度食べれていた機能が食べられなくなる過程と、小児の摂食嚥下障害はそれ以外の疾患などの影響により、これから食べる機能を獲得する段階にあります。私たちの活動は当事者同士が集まったことでこの問題を認識したことから始まりました。

 2019年に開催した「特別支援学校の特別おもしろ祭」で私と共同代表の加藤が食のブースを出展しました。そこではブースをスナックに見立ててミラーボールを回したり、スナック感を演出したりしました。「スナック都ろ美」の都ろ美はとろみ剤とスナックを掛け合わせています。そこでは誰もが一緒に食べられる物を提供したり、みんなで試食したりしました。このお祭りでは愚痴が言える環境をつくり、私たちがスナックのママ役となり、食に関する悩みを聞きました。悩んでいる人たちの現状を知り、お祭りで終わるのではなく団体として立ち上げることにしました。そして、2020年4月に団体を立ち上げ、スナック都ろ美のホームページを開設し、オンラインを活用し各地のお母さんたちをつなぎました。気軽に話せる空間を作ったことでお母さんから社会課題に関する内容が出てきたり、この課題はコーディネートすることで解決することができるのではないかと考え始め、2022年に一般社団法人mogmog engineを設立しました。スナック都ろ美は当事者が集まり気軽に愚痴が言えるコミュニティであり、それ以外には外食支援産業やインクルーシブフード*などの新しい商品開発を行い、企業や行政にアプローチし解決する活動を行っています。
*噛んだり、飲み込んだりするのが難しい摂食嚥下障害のある方でも周りの方と一緒に美味しく食べられる食事のこと

――mogmog engineの名前の由来についても教えてください。

永峰さん: 「mogmog」は食べるという意味で、「engine」は生きるエネルギーや検索エンジンのような意味です。私たちのコミュニティに来ると、何でも情報が集まっていて参加すれば解決できるという意味を込めています。今はAIに聞けば何でも教えてくれる時代になりましたが、摂食嚥下障害は人それぞれであり、専門家でも分からないことが多いんです。当事者の日々の工夫や経験に基づくリアルなアドバイスが得られるのがコミュニティの強みなんです。コミュニティではLINEのオープンチャットとZoomを活用しているのですが、例えばLINEで誰かが困りごとをつぶやくと私たちが回答するのではなく知っている先輩たちがその困りごとにアドバイスしてくれるんです。生きたやり取りが24時間、365日行われています。

 オープンチャット以外にも興味関心があったテーマを細分化し深掘りするトーク「部活」を始めました。具体的にはキャラ弁部やコンビニスイーツ部、医療的ケア部、災害対策部、旅行部など、食だけでなく子育てに関する悩みを共有できるようになっています。最近では、パパ同士のコミュニティがないということでパパ部が発足しました。

――いろんな方の知見が誰かのお困りごとの解決につながるというのは素晴らしいですね。CSOフォーラムの授賞後、人材育成に注力されてきたとお伺いしました。スナック都ろ美にはおかみさん制度というのがあるそうですが、どのような仕組みで進めているのでしょうか。

永峰さん: 47都道府県に1人ずつおかみさんを立てることを目指し、現在26県まで増えました。やみくもにおかみさんがいない県にアプローチするのではなく、展示会を開催し自らも足を運んでその土地の様子を見たり、会場にいるママさんたちにレクチャーする仕組みです。昨年は札幌のキッズフェスタに初めて参加し、北海道エリアを重点的に進め、札幌店、苫小牧店、帯広店の3店舗が増えました。初回のイベントだったので集客は期待していなかったのですが、そのイベントだけで100名の新規メンバーを獲得することができました。参加者は地元のママさんたちに会うことを目的に来店しており、地元のママさんたちが中心になって地域を回していくことが大切であり、信頼関係が重要だと思いました。日頃から近くにいる地元のママさんには安心感やネットワークがあるんです。各地を訪問しおかみさんの偉大さを痛感したことで、おかみさんが輝き活躍できるよう私たちのノウハウを伝えているところです。

――おかみさんになるための基準はあるのでしょうか。

永峰さん: おかみさんはスナック都ろ美というコミュニティを運営していく上での大事なエリアマネージャーのような役割なんです。コミュニケーション能力や明るい雰囲気、相談しやすいというような要素が求められます。今年はおかみとは何かという「おかみの品格」を作り、おかみさんのイメージを統一し質を上げることに取り組んでいきたいと思っています。これまでオンラインで月2回おかみ会議を開催してきましたが、各地のおかみさんが顔を合わせる機会がありませんでした。今年は全員が集まり情報交換する機会を設けることを目標に掲げています。おかみさん自身のやる気も向上しており、各地のおかみさんがつながっている専門家も前向きになってくれています。外食支援産業に取り組む企業も興味を持ってくれているため、この機運が各地で広がっていけばと思っています。

――新規事業として最近リリースされたmogmogレシピについて教えてください。

加藤さん: 摂食嚥下障害がある人が何を食べたら良いかという情報があまりに少なく、介護食は充実していても親の目線からすると「私たちが食べたい物かどうか」という疑問が残っていました。介護食はあまり気分が上がらないのが本音ですが、毎日の食事って大事なんです。私たちの毎日の食事が介護食に置き換わるというのがどういうことなのか、食べることは生きるエネルギーなのでワクワクしたいし、美味しい物を食べたいという当たり前のことが言われていませんでした。私たちは食いしん坊なので美味しい物を食べたいという想いからこの活動を続けてきました。実際に柔らかさと飲み込むという点に配慮された美味しい物はあったんですが、それぞれが苦労して作ったわりには認知度がなく知られていないという現状がありました。全国各地で頑張っている人たちが横でつながり、全人類にとって知った方がいい情報を届けたいと思い、このプラットフォームを作りました。

 私たちは子どもたちのために活動をしてきたのですが、高齢者の方や私たちの世代を含めニーズがある分野ではあったのですが、介護食に対する不安感が拭えずにいました。食に関する相談をよく受けるのですが、相談者に商品を1つずつ紹介する際に情報量が多くなっていたことと、商品が分散しているので買い回るのが大変な状況でした。そこで、1カ所のプラットフォームにいろんな商品があり、商品を買いまわる手間が省けるECサイトを作りました。ドロップシッピング方式でメーカーから直接発送できるシステムを採用しています。

――オープンから少し経ちましたが、周りからの反響はいかがでしょうか。

加藤さん: 周りからすごく期待されているサイトだと感じています。メーカーの方とのお話で必ず出てくる課題がエンドユーザーの声を聞くということだったんですね。メーカーの方から施設や病院などの大きな医療施設に商品導入の営業に行くことがあっても、予算の兼ね合いや組織の決裁が下りず、利用者に届かないことで悩んでいるということをよく聞いていました。また、このmogmog レシピがあることで、在宅医などの医療従事者の方々がmogmog レシピを期待しているという声をいただいています。在宅医の方がお家に訪問した際に、ご本人やご家族に1つの商品だけをお勧めするということが難しく、mogomogレシピであればサイトの情報を伝えるだけでいいのでとてもありがたいという声をいただきました。専門職の方は日々忙しく情報収集する時間がないため、いろんな商品だけでなく日頃の食事で困った際はレシピ集を見れば解決するという手の届かなかった部分を、私たちが今後取り組んでいきたいと思っています。

――いろんな方のお役立ちサイトになりますね。サイトに掲載する商品はどのように選定しているのですか。

加藤さん: 介護商品サイトとの違いは美味しいものを食べるという軸があることです。私たちが実際に食べたことがあるもので愛用しているもの、子どもたちに食べさせたいものやプレゼントしたいと思うようなものを、「mogmogオーディション」を開催し、私たちが実際に商品を購入して試食しています。評価基準は柔らかさだけでなく、自分が買いたいか、人にプレゼントしたいかという点も含めています。自ら取り寄せて商品を審査しているので忖度なくいろんな意見が出るんです。みんなで食べた時にワクワクしたか、食べ続けたいか、美味しいという雰囲気が生まれるかどうか、という基準で選んだ商品サイトは今までに無いんです。介護食に限らず一般販売されているもので「これもいけそう」という商品もチャレンジしています。美味しくないと感じた商品は掲載しないという方針で決めています。

――私たちも利用できるサイトなんですね。このサイトを幅広い方に知ってもらい活用してもらうために協働したい相手などはいますか。

加藤さん: すでに声掛けをしているのですがグルメな人たちや飲食店の方、シェフなどの美味しさに対して貪欲な方々と手を組んでいきたいと思っています。介護食業界の方とはすでにつながっているため連携を深めたいというよりは、何を食べたいか、どんなものを食べるとワクワクするか、幸せと感じるかなどの美味しさを追及できる方と連携していきたいと考えています。

 日本食は食べる際に咀嚼が必要な食文化と言われています。例えばノルウェーの家庭料理は健康体な方も食材をペースト状にしてスープとして食べるという文化があるそうです。私たちから見るとそれはミキサー食なんですが、普通の家庭料理として食卓に並ぶというお話を聞いた時に、世界各国の料理を特集するアイデアもアリだなと感じました。

永峰さん: 実は各地の地元で作っている料理が嚥下食に良いのではないかということがあります。新しい商品との出会いが企業にとっての新しい発見や売上につながったらおもしろいなと思っています。

 ――今後さらなる期待がふくらみますね。最後に、今後のビジョンについて教えてください。

永峰さん: 食を通してインクルーシブな社会を作ることを目的に、多様な方々がともに集い、居心地よく過ごせる空間作りを目指しています。今年は特に子ども食堂を通じて障がいをもった子どもたちが地域の健常児とどのように関わるかを考えていきたいと思っています。最近ではインクルーシブな公園もありますがそこに行ける子どもたちは一握りなんですよね。公園に行っても一緒に遊ぶことができないということもあるので、食をテーマに一緒の空間で顔を合わせて過ごしたり、交流できればと思います。顔を合わせることで災害が起こった際にも助け合いが生まれるので、子どもの頃から地域と交わるということをやっていきたいと考えています。
加藤さん: 食を通してインクルーシブな社会を作ることを目標に事業活動を行ってきましたが、その実現に向けて少し見えてきたという手ごたえを感じています。障がいという境界線を溶かすためのツールとして食が重要だと考えています。同じ人間だと感じるのは、食べるなど生活の中の同じ動作をした時だと思うんです。美味しいという表現に言葉はいらず、笑顔や瞳の輝きで美味しいということを伝えられるんですよね。食べる力が弱くなっても食べることに貪欲に生きていける人が増えれば、みんな元気に良い人生を過ごせると思うので、これからも活動を続けていきたいと思います。

※一般社団法人mogmog engineの取組内容はこちら
https://snack-toromi.com/
※mogmogレシピ
https://www.mogmog.or.jp/