大阪NPOセンター

役立つ専門家の声

2016.11.11

活動計算書への移行について

  大阪NPOセンター

2011年6月15日に成立した改正NPO法では、「NPO法人会計基準」を標準的基準となるように「収支計算書」を「活動計算書」(活動にかかる事業の実績を表示するもの)「収支予算書」を「活動予算書」(その行う活動にかかる事業の収益及び費用の見込みを記載した書類)に改め、活動計算書及び貸借対照表を「計算書類」とし、財産目録は、附属明細的な位置付けになりました。さらに昨年4月1日の施行に伴い、移行期間はあるものの新事業年度より、活動計算書への移行をお考えの団体さんもいらっしゃると思われます。そこで、活動計算書の意義や記載のポイントについて、大阪NPOセンターたすけ隊の秋岡税理士にQ&A形式で解説いただきます。

NPO法人との関わり:平成13年8月大阪NPOセンターたすけ隊の事例研究会に参加(てんしもビル時代)その後、講座の講師や「NPO法人まるごと設立・運営マニュアル」改訂作業に関わり、多くのNPO法人の税務・会計の相談に対応する。
「キャリアカレッジ」の専任ゼミ講師も務める。

ある日のあるNPO法人のAさんとの会話

A:うちの法人も今度の決算で、これまでの収支計算書から活動計算書に移行することになりましたよ。

私:そうですか。理事会で承認されたんですね。できそうですか?

A:少し不安なんで色々教えて下さい。

私:今までの収支計算書は資金の増減を示したものですが、活動計算書は正味財産の増減を示したものです。

A:しょうみざいさん?

私:資産と負債の差額の事です。たとえば、ある人が1億円の不動産を持っていて、銀行からの借金が9千万円あるとしたら、その人のしょうみの財産は1千万円ですよね(1億円-9千万円)資産-負債=正味財産です。

A:その増減が活動計算書なんですか?

私:そうです。収支計算書では資金の概念とか、一取引二仕訳などの難しいことを勉強しないとダメだったんですが、活動計算書は民間企業でいう損益計算書にあたるので、企業会計を知っているAさんも親しみやすいでしょう。もちろん様式は違いますが。

A:そうですね。NPOの会計をまかされた当初はなんのこっちゃと思いました。固定資産取得支出?借入金収入?勉強してきた簿記とは違っていました。でもNPO法人会計基準ができて、NPO法も改正されて活動計算書になったんでよかったです。

私:活動計算書の様式ですが、経常収益から経常費用を差引き当期経常増減額を表示します。それに経常外収益、経常外費用、当期正味財産増減額、前期繰越正味財産額、次期繰越正味財産額の順で表示します。

A:前期繰越正味財産額はどの数字ですか?

私:前年度の貸借対照表の正味財産額です。

A:活動計算書の一番最後にある次期繰越正味財産額と当期の貸借対照表の正味財産額が一致すればOKですか?

私:そうです。一致していなければどこか計算が間違っていることになります。一目でわかりますよね。

A:勘定科目について教えて下さい。

私:まず経常収益ですが、受取会費、受取寄付金、受取助成金等、事業収益、その他収益の5つに分けます。これらは使わなければ削除できますが、科目の追加はできません。受取会費はさらに任意で正会員受取会費、賛助会員受取会費などに分けて表示することができます。事業収益は事業の種類ごとの内訳表示ができますし、自主事業収益、受託事業収益に分けることもできます。受取助成金等の等は助成金と補助金のことです。

A:収支計算書のときの「収入」は活動計算書では「収益」になるんですね。

私:そうなんです。受取〇〇や〇〇収益という表示になります。

A:経常費用について教えて下さい。

私:事業費と管理費に分けます。さらに事業費を人件費とその他経費に分けます。管理費も同様です。人件費には給料手当や法定福利費などがあります。その他経費には諸謝金や旅費交通費、通信運搬費などがあります。
会計基準別表1に活動計算書の科目の解説があるので確認して下さい。

A:使わない科目やそこにない科目は?

私:別表1は主なものを示しただけで、これら小科目は削除や追加は法人の自由です。ただし利用者の理解に支障がないようにして下さい。

A:収支計算書のときみたいに〇△事業費としてはダメですか?

私:〇△事業費だと具体的に何に使われたのか内容がわかりませんよね。活動計算書は形態別に科目を表示するので、何にいくら使われたのかが分かります。複数事業を行なっている場合は事業別損益を注記で開示します。ですから、注記はとても大事なもので、決算書と一体のものと考えて下さい。

A:事業費と管理費について教えて下さい。

私:事業費とはその事業を行なうために直接要する人件費やその他経費のことです。一方管理費とは総会や理事会の開催運営費や管理部門に係る人件費及び事務所の賃貸料・水道光熱費などです。会計基準Q&A14-1を参照して下さい。 

A:うちみたいな小さな法人だと事業部門と管理部門とが明確に分かれていません。そんな場合はどうしたらいいんですか?

私:①まず、自分たちの日々の活動の中で管理部門に係る業務はどんなものがあるかをリストアップして、それにどの程度の時間やスペース等を使っているかを把握します。②事業部門と管理部門に共通する経費が出てきたときには、分ける為の割合を決めてその割合に応じて分けます。この作業を按分(あんぶん)と言います。代表的な按分基準には従事割合や面積割合があります。詳しくは会計基準のQ&A14-2にあるので参考にして下さい。

A:複数の事業をやっていたら事業費も按分が必要ですか?

私:そうです。注記で事業別損益を表示するのに必要です。

A:面倒だしややこしそうですね。

私:確かにそうかもしれませんが、法人として必要ですよ。全体の事業はどうなのか、事業別にはどうか、管理部門はどうかなど法人のこれから先の展開に役立ちますよ。私が所属している法人でも事業別損益を注記で表示したときに各事業の実態がよくわかると大変喜ばれました。

A:経常外収益と経常外費用は何ですか?

私:通常の活動以外から生じる固定資産の売却損益や過年度の損益修正などの事です。

A:民間企業の特別損益の部のことですね。

私:そのとおりです。民間企業での営業外損益は経常収益・費用で表示します。ですから支払利息は経常費用になります。もちろん経常外収益・費用がなければ表示は不要です。

A:さっき注記は大事と言ってましたよね?

私:注記は活動計算書や貸借対照表を補足するもので、これらでは示すことのできない有益な情報を表すものです。

A:どんな項目がありますか?

私:簡略しますが、①重要な会計方針②会計方針の変更③事業別損益④施設の提供等の物的サービスの明細及び計算方法⑤ボランティアの明細及び計算方法⑥使途制約寄付等⑦固定資産増減⑧借入金増減⑨役員等との取引⑩資産等の増減を表すのに必要な事項 です。

A:該当しない箇所は不要ですよね。

私:はいそうです。しかし、どのような法人でも最低①は必要になります。また、収支計算書では固定資産取得支出や借入金収入という科目がありましたが、活動計算書にはありませんので、⑦と⑧で示すことになります。

A:④と⑤について詳しく教えて下さい。

私:これらを計上する場合の方法は二つあります。ア注記だけして、活動計算書には計上しない。イ活動計算書に計上し注記もする。アは金額を合理的に算定できる場合イは金額を客観的に把握できる場合に可能です。

A:うちの法人は助成金をもらったので⑥が
必要ですね。ところで、先生が所属している関西NPO会計税務研究会ではどのくらいの法人が活動計算書へ移行したのかを調べたのですか?

私:はい。大阪NPO情報ネットで決算書を調べました。私は160社程担当しました。

A:どうでした?

私:20数件活動計算書に移行していましたが、残念なことに①注記がない法人がほとんどで②人件費とその他経費に分けず事業所別に分けていた③借入金収入を経常外収益に表示していた④勘定科目の下に・・・・・を入れていた⑤事業費に売上原価、人件費、その他経費と3つの科目を設けていた等々、基準に従わずに作成していたものもありました。

A:しっかり基準を読まないとだめですね。私:そうですね。今一度しっかり読み込んでほしいですね。後ろに移行ポイントの図を載せましたので参考にして下さい。(「みんなで使おう!NPO法人会計基準」ホームページより)

参考図書等:認定NPO法人NPO会計税務専門家ネットワーク発行「NPO法人会計基準ハンドブック」八月書館発行「NPO法人会計基準完全収録版第2版」「みんなで使おう!NPO法人会計基準」ホームページ
http:/www.npokaikeikijun.jp/

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