大阪NPOセンター

役立つ専門家の声

2018.12.14.20:00:00

社会起業家の取組事例vol.3(NPO法人子どもデザイン教室)

  大阪NPOセンター
■□-----------------■□-----------------■□-----------------■□-----------------□■

親と暮らせない子どもたちの社会的排除を

デザインの力で改善する
 

■□-----------------■□-----------------■□-----------------■□-----------------□■


▶キャラクターを企業に販売し、自立資金を積み立てる


学資支援「子どもデザイン基金」では、個人寄付(キッズサポーター、年間3,000円)、
法人寄付のほかに、企業が子ども個人を直接支援する「こどキャラレッスン」があり、
児童養護施設・里親委託・母子生活支援施設の子どもを対象に、月1回、無料で提供している。

「こどキャラレッスン」では、子どもたちがつくったキャラクターデザインを企業に販売する。
収益の25%は子どもたちの銀行口座に入金し、自立資金を積み立てる。
残りの75%は、子どもたちの学習支援レッスン費用に充当する。

子どもたちがデザインしたキャラクターは、さまざまな企業に採用されている。
宇治産の煎茶「小町特上京宇治煎茶」のパッケージ(イーサポート株式会社)、
高機能パンツ&ショーツ「不思議忍者のアシストグランパンツ」のパッケージ(アスト株式会社)、
「そば処 山久」のキャラクター、大阪ガス㈱広報誌の表紙などがある。

自分がつくったキャラクターが世に出ていく。
「認められた」という成功体験は、親と暮らせない子どもに不足している自己肯定感を高めることにつながっている。
 
  「デザインレッスンを通じて、子どもたちに私が教えられるのは、『創造力』『努力』『対話』の3つ。
アイデアを外に出す技術が創造力。
その創造をあきらめず続けるのが努力、それを誰かに伝えるのが対話力です。
対話力があれば、自己表現だけでなく『私、困ってます』と助けも求められます。
この3つができれば、将来、少々の困難があったとしても乗り越えていけると考えています。
私がそうでしたから」と和田さんは話す。




▶「愛されたい」に応えるためには、寝食を共にするしかない


「子どもサポートホーム」事業の一環として、和田さんは、2012年より、養育里親となり、親と一緒に暮らせない子どもを引き取り育てている。


「デザインを週に数時間教えるだけで、子どもたちの根源的ニーズは満たされません。
根源的なニーズとは、『愛されたい気持ち』です。
そのためには、寝食をともにするのがベストだと考えました」

和田さんは、短期の里親委託を繰り返しながら、延べ10数人の子どもと関わった。
「反抗的で、私を『ジジイ!』と呼びすて文句いったりする子たちに、どう接していいのか、最初は戸惑いました。
今は、悪態つくのが、むしろ嬉しいです。
どんな中傷や暴言にも、その陰には『愛されたい』と切に思う子どもたちの気持ちが見えるからです」
現在は、より家族的な養育をするために、高校2年生、中学2年生の子どもを引き取り、成人するまで一緒に暮らしたいと考えている。

和田さんは今、2017年の開設を目指して、教室を開設した当時からの夢だったファミリーホームの設立準備を進めている。
ファミリーホーム(小規模住居型児童養育事業)とは、厚生労働省が定めた第二種社会福祉事業。
家庭環境を失った子どもを、里親や児童養護施設職員など経験豊かな養育者がその家庭に迎え入れて養育する「家庭養護」である。
里親は一度に4名までだが、ファミリーホームなら最大6名まで受け入れ可能となる。



▶子どもの可能性を広げ、専門スタッフとチームで養育



行政が示しているファミリーホームは、夫婦の養育者を想定した形態が一般的であるが、和田さんのイメージは少し違う。
「夫婦もいいですが、できれば、養育者だけでなく、さまざまな専門スタッフを揃えて、チームで養育しようと考えています。
というのは、夫婦の一元的な価値観だけで、子どもの可能性が狭められることを避けたいからです。
たくさんの価値観を示して、親と暮らせない子どもが、人生を選べるようになればいい」。
和田さんの理想とする形態でファミリーホームが開設できるよう、行政と条件の擦り合わせをしているそうだ。

今後、デザイン事業では、一般の学生や大人向けのレッスンを縮小し、親と暮らせない子の支援だけに特化するとともに、安定した経営の望めるファミリーホーム事業にも力を入れて、より効率のいい法人経営を目指す。

和田さんが描く夢は、
「ファミリーホームで育った里子たちが、20歳になり、ファミリーホームを出ることになったら、ファミリーホームのスタッフとして働き、新しく受け入れる子どもたちとともにファミリーをつくっていけたらいいなと思っています」。

記事一覧